大正野球娘。 第12話 「土と埃にまみれます」 (アニメ)

                 
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ついに朝香中学との試合が始まった。序盤は、巴の打撃と晶子の魔球が威力を発揮し、桜花会がリードする。しかし、晶子の魔球に対策を講じた朝香打線は五回表、ついに逆転し、なお突き放していく。大量リードを許し、これ以上一点も与えられない七回表。ヒット性のあたりを雪がナイスキャッチし、なんとかのりきるが、雪はそのまま地面に倒れこんだまま動かなかった。

大正野球娘もとうとう最終話を迎えた。
朝香中の猛反撃にあい、逆転を許した櫻花會の必死の粘りは丸々一話を費やすだけの価値のある描写で、見応えのある野球パートになっていたと思う。

男子には結局かなわないといった残酷な結末ではあったが、性別を超えて一人の人間としてリスペクトし合うまでの過程が今までの櫻花會の努力の実りとして感慨深さと共に表現されていた。
ただ、野球の試合の熱気が伝播して少し離れたところで連鎖的に盛り上げられる感動は描き込みが弱く、積み重ねがないから取ってつけたようなもので浮いていたのが気になった。これはスポーツの感動の素晴らしさというのはそういう興味がまったくなかったり、険悪な関係だった人までを包摂してしまう偉大なものというメッセージだったのだろうが、それも含めて全体的にかなり作為的で無理をしているような違和感があって醒めた目線で見ることになってしまった。
最後の最後に小梅と許婚が手をつないで歩いて終わるところも、次は朝香中へのリベンジではなく、結婚であると思わせるように示唆されていて、テーマとして女性解放を仄めかしてきただけに結局それかと考えると少し滑っているようでがっかりした。

全体的に、尺の都合で各キャラクターの個性と作品に込められた様々なメッセージを紹介し足りないまま終えてしまったように思う。テーマに関連してもう少し掘り下げて描き込めるのに飛ばされてしまったシーンが随所に見られ、もどかしさがあった。この粗さがすごくもったいないなと思わされたシリーズだった。話数がもう少し多く用意されて余裕を持った構成が出来ていれば、また違う作品として大化けしていたのかもしれないなと思うと惜しい。
                 
        

大正野球娘。 第11話 「そゞろに胸の打ち騒ぐ」 (アニメ)

                 
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朝香中学との試合前日、小梅の両親は、野球の事を知ってしまう。近所の寺で素振りをしている小梅を見つけた父・洋一郎は、隠し事をし、嘘をついていたことを叱る。翌朝、小梅は洋一郎の反対を押し切って家を出る。試合前の練習を始める桜花会。開始時間が近づき、朝香中学の練習も始まるが、なぜか晶子が、姿を見せない。家に電話をすると、急な発熱で、休ませるとの事。不審に思った小梅は晶子の家に駆けつける。

いよいよ櫻花會と朝香中の試合が始まる。今日のこの日のために頑張ってきた櫻花會だが、それに対しての演出は過剰ではなく、視聴者の感慨と想像力に委ねるためにあえて淡々とさせたような進行が、シュールなこの作品の雰囲気とよく合っていた。この作品らしい独特の盛り上げ方が、まさに『大正野球娘。』と感じさせてくれる。

ただ、この期に及んで、親に野球をしていることがばれたとなって話を複雑なものにしているのが気になった。このタイミングで野球をしていたこと、あるいは嘘をついていたことで親と揉めるというのは意外だった。自分は当初、女子が野球をすることあるいは女子が社会へ進出することへの社会(時代)の偏見と具体的な障害のメタファーとして、親の存在がストーリーに大きく関わってくると考えていた。しかし、この流れだと、せいぜい朝香中との試合を親が観戦して、そこで娘の努力の成果に胸を打たれて認めるといった展開ぐらいで締められそうなのだが、どうなのだろうか。

朝香中との試合は、後半パートに試合前半部分が描かれる。序盤は櫻花會が優勢に試合を進めるが、朝香中も晶子(投手)攻略の糸口を見つけたようで、次回は朝香中の反撃から始まり、感動のフィナーレへと繋がれるのだろう。
櫻花會が男子相手に健闘するところが痛快であり、練習の成果による技術の向上、そして、野球(戦い)への心構えの変化に改めて感慨深さを覚えた回だった。
                 
        

大正野球娘。 第10話 「私は何をする人ぞ」 (アニメ)

                 
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桜花会は合宿のため、小笠原家の別荘へ。鏡子は、この機会に巴との距離を一気に縮めようと張り切る。
昨晩の嵐で別荘は、半壊状態で、近くの公民館で合宿を行うことに。
アンナはこの2週間が、総仕上げとさっそく練習を始める。
鏡子は、巴にいいところを見せようとするが失敗ばかり。
合宿の中日、アンナが肝試しを提案、落ち込んでいた鏡子は、チャンスと意気込む。

合宿をする櫻花會。よくわからないのだが、仮に野球をやっていることを親に隠しているとして、いいところのお嬢様(中学生)が適当な理由でよそにお泊りを続けることは時代的にありなんだろうか。

合宿自体は、それぞれのキャラが寝食を共にしていく中で個性をぶつけあって生まれたコミカルなやり取りが展開されていくのが面白かった。今回の主役は鏡子と巴で、巴になんとしても近づきたい鏡子が良いところを見せようと奮闘するものの、実力が追いついていない彼女では気合が空回りするばかりになってしまう。失敗の連続に自分自身の存在について落ち込みながら問うていき、やがてすっくと立ち上がるまでの流れは、「野球」のテーマに相応しいスポ根的な、あるいは少年漫画的なノリで、主人公らしさがあってよかったと思う。これは本当の主人公である小梅がおっとりしすぎているから、余計にそれが映えた。
                 
        

大正野球娘。 第9話 「誤解の多い料理店」 (アニメ)

                 
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小学生との練習試合を重ね、自分たちの弱点を徐々に克服し、上達してきた桜花会メンバー。ついに、太郎たち小学生から1勝をもぎ取ることができた。それを見てアンナは朝香中学に正式に試合を申し込むことに。一方、両親に野球をやっていることを告げられないでいる小梅は、あることがきっかけで父・洋一郎と大ゲンカになり大騒動。
そんな中、朝香中学から試合を拒否する手紙が届く。晶子は激怒して岩崎に電話をするのだが・・・。

とうとう小梅が野球をしていることが両親にばれてしまう! と思いきや、わざとらしいすれ違いを連続させて小梅と三郎の関係を進展させるのが中心の内容になっていた。
結局、両親には野球をしていることがばれたのかばれなかったのか、ばれなかったとして最後まで隠し通すのか、それともまた両親に野球をやっていることがばれるとかで一悶着描かれるのか、個人的には少し引っ張りすぎだと思ったし、今回の話は冗長で一話を丸々つかうほどの意味があったかどうかという点で疑問に思った。残りの話数も少なくなってきた中で、もっと他に描きこむべきところ、描写できるところはあったのではないだろうか。あるいは、折角登場人物が多いのだから、もっと様々な角度から見た上での厚みのある物語が欲しいと感じた。
                 
        

大正野球娘。 第8話 「麻布の星」 (アニメ)

                 
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本日も小学生たちと練習試合をしている小梅たち。スコアブックのつけ方を学んだ乃枝は、苦労して身につけた魔球を使ってみないかと晶子に持ちかける。だが晶子はまだ魔球を思うように投げられず、この日も結局負け。
そんな試合の様子を伺う男がいた。
彼は吉村という国際キネマの社員で、製作中の映画の主演女優の代役に小梅を起用したいと言い出した。

小梅が映画の主演女優に抜擢されててんやわんやとなる回。小芝居に終始したという意味では、前回と同じテイストの構成になっているのだが、今回は映画という劇中劇の主役(ヒロイン)というポジションをテーマに、メタフィクションを利用して小梅の作中でのポジションが語られている。
エースの晶子と4番の巴とはタイプの違う、受け手としての小梅という存在が主役であるということの滑稽さが今回のエピソードの最後のオチと重ねられており、また許婚の三郎との演技練習では愛を語り合う男女の役をそのまま二人の将来の姿を投影したような格好で演出されていた。惜しいのは、突っ込みが弱い大人しい作品なので、これらのシーンがいまひとつ映えてこなかったことだ。もう少しほのめかすような伏線としての演出が欲しかったところである。
                 
        

大正野球娘。 第7話 「麻布八景娘戯」 (アニメ)

                 
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市中では「辻打ち」という、有名中学のピッチャーが夜道に何者かにバットで挑まれ、打たれるという珍事件が発生している。
桜花会の中でも、石垣環が噂話をしだすが、そこへ妙に絡んでくる巴。実は辻打ちの正体は巴だったのだ。
かねてから小梅に近づきたい巴が小梅を巻き込んだいたずらだったのだが、その二人の不審な行動に晶子が気づき、ならばと、こんどは晶子が夜道で「辻投げ」と称して練習中の魔球で男子生徒に挑むのだが…。

4番打者として思い切ってバットを振りたいという願望から巴が小梅を誘って「辻打ち」を実行する。それは夜中に野球部の練習帰りの男子中学生を捕まえて、自分達の素性を隠したまま1球勝負の対決をすることであった。

対決する男子中学生側のノリがよく、それに快く応じてくれるからテンポよく勝負が繰り広げられていて楽しい。やがてその辻打ちに辻投げとして晶子が参加したり、その他のメンバーもとなっていき、それがいつの間にか泥棒を追いかけ回すことになり、野球を活かした大立ち回りを演じるなど、まるで劇中劇のような寸劇的な意味合いでまとめられた回だった。
晶子は今回から魔球(変化球)の習得に励んでおり、どうやらフォークのような軌道の変化球を投げるというのが示唆されていたが、話の流れの中にその過程をうまく取り込んでいて、笑いの中に晶子の奮闘を包み込んでくれたおかげで、最後まで朝香中学にはかなわないのだろうなと暗黙知的に思わされる地道なステップアップの表現と無邪気な少女たちの懸命な姿との残酷なギャップに青春ドラマのような救いが齎されていて微笑ましさがあってよかった。
                 
        

大正野球娘。 第6話 「球は広野を飛び回る」 (アニメ)

                 
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「実戦に勝る練習はありません」とアンナ先生に言われ、他校に練習試合を片っ端から申し込むものの、断られっぱなしの桜花会。
小梅は、野球をやる場所がなくて困っている小学生たちに、場所を提供する代わりに試合を申し込む。
ところが小学生にもぼろ負けしてしまい、問題山積み。
そこで乃枝が「川島流勝利の方程式」と称した善後策を披露する。
いろんな対策がある中で、晶子と小梅には「バッテリーは一心同体、真の夫婦の努力を」と言われ、
「新婚生活」を送るべく、晶子が鈴川家にやってくる。

基礎練習を積み重ねてきた櫻花會はとうとう実戦練習へと移る。しかし、アンナ先生が長崎の親戚の面倒を看るために一時的にチームを離れることになる。先生なしで櫻花會は練習相手を見つけることになるが、同年代の男子のチームにはまるで相手にしてもらえない。困り果てた櫻花會だったが、小梅がひょんなことから出会った小学生の男子たちを連れてくる。彼らと練習試合をするという小梅の提案に晶子は渋るが、プライドのために小学生を理由に断るのでは私達の申し込みを断った他の男子と変わらないという主張が通り、練習試合が始まることになる。

はじめは小学生だと馬鹿にしていた相手に大敗を喫してしまう櫻花會。衝撃的なシーンといえば、衝撃的なシーンではあるが、まともに野球を始めて間もない女子達の相手としてはこれでもまだ相手のほうが実力が上という設定は残酷ではあるがリアルといえばリアルなのかもしれないと思った。現実のサッカーでもなでしこジャパンが男子中学生の選抜チームに大敗なんてことがあるわけで、如何ともし難い生物学的な性差というものがあるのだろうが、それでも中学生ぐらいの年齢で小学生相手に試合をするなら女子に分があってもおかしくはないだろうと、櫻花會が負けた試合を分析して、勝つために野球の基本、チームプレーを学んでいくところがよく描けている。
足の早い胡蝶を左打者にしてボールを転がさせたり、ホームランを打ちたがる巴に長打を捨ててミートを心がけるように指示したり、櫻花會のブレーンといえる乃枝のマネジメントによってみるみるうちにチームが見違えたものに変化を遂げる過程は『もしドラ』的な面白さがあった。ただ、いくら勝つためとはいえ、自分を捨ててチームのために尽くすことを強制し続けるやり方にストレスと若干の反発も描かれていた。そこでまた話が次回以降盛り上がっていくのかもしれない。

夫婦のように心を通い合わせることが必要だとお互いがより歩みあった結果、素晴らしいバッテリーの関係に成長した小梅と晶子のエピソードから、小梅が本当に将来の夫婦になる相手が許婚として決められるところに繋がっているのも演出がうまかった。この部分も作品のテーマと絡んで重要になりそうなので、次回以降に期待したいと思わされた。

アンナ先生は1話の間に離れて、そして帰ってくるという東京と長崎の往復をやってのける。良いキャラクターなのですぐに戻ってきてくれて観ている方としてもほっとできたし、アンナ先生の移動によって駆け足で進む話の展開の中で経過している時間を意識させられ、彼女の視点を通して、女子三日会わざれば刮目して見よ、といった感じの驚きが改めて引き立てられている。

肝心の野球のシーンは動きが少なく、躍動感があまりない。そこに女子が一生懸命に取り組んだお粗末な野球のシーンが絶妙に投影されているという見方も出来て、この作品のあえて地に足をつけたところから出てくるシュールな光景とうまく重なっているのも面白いのだが、魅力的なキャラが揃っているだけに、もう少し野球シーンの動きの流れの中で色々な角度から試合を見ることが出来たら良いのにとも思った。
                 
        

大正野球娘。 第5話 「花や蝶やと駆ける日々」 (アニメ)

                 
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呉服屋の娘・宗谷雪が、自宅の蔵の中で眠っていた運動着を持ってきた。
早速みんなで着込んでさあ練習!ところが、記子が抜けて8人となったため、アンナは当分人数が揃うまで、野球の練習よりも本格的な基礎トレーニングに切り替えた。
だが、予想以上の厳しい練習に、みんな根を上げてしまう。
早く9人目を探そうとあせる小梅たち。乃枝が戦術的観点から足の速い「切り込み隊長」を探そうと提案する。
情報通の記子に聞くと「足の早い人を探すなら陸上部に行けば」と言われ、晶子・小梅・乃枝の3人はさっそく陸上部の練習を見に行くことに。

新生櫻花會が始動する。まずは呉服屋の雪によってチームのメンバーに運動着(ユニフォーム)が配られる。そういえば、朝香中学との練習試合ではセーラー服や和装で野球をしていた。これが運動着になるのだから、それだけでもすごい進歩のように思えてしまうマジックがこの『大正野球娘。』の面白いところだと思う。

メンバーが8人という理由でアンナ先生から基礎トレーニングに専念させられ、ひたすらランニングなどの単調で厳しい練習に耐えかねた小梅達は、早く本格的な野球の練習に移るために、なんとか9人目のメンバーを揃えようとする。
ここで今回からの新キャラクターが登場し、櫻花會の新戦力として陸上部の菊坂胡蝶という塁間距離程度の短距離なら抜群の速さを誇るスペシャリストタイプの子が加わることになる。
何とか9人になった新生櫻花會、これで本格的に野球の練習かと思いきや、まだまだ櫻花會のメンバーは体力不足なので暫くは基礎トレーニングを言い渡されるという素敵なオチがつけられる。

それまで本格的な運動系の活動とはほとんど無縁だった者もいる櫻花會。野球というゲームをする準備段階としてひたすら面白くもない走りこみをさせられる過程で、暗く深刻にならない程度にメンバーの複雑な表情が読み取れるようになっており、行間に考えさせられるものがあったのが面白い回だった。
今後どうなるかわからないが、今回については、補欠の存在しない、メンバー一人が欠けたら終わりの誰もがレギュラーとして「必要とされる、必要としてくれる」櫻花會だからこそ乗り越えられたというメッセージが穏やかに表現されていて微笑ましかった。このあたりは友情物語として描かれながら、女性の社会進出云々のテーマと櫻花會における女子達の自己実現への強い思いもうまく重ねられている。

なお、小梅についてはやはり両親にはまだ野球をやっているとは内緒にしているようだ。どうも、それを使って話の展開に彩りが加えていくとアナウンスされたシーンがあったが、当初に自分が思っていたほどには両親の存在が小梅が野球をするにあたっての大きな障害として立ち塞がることはないのかもしれない。スポ根青春コメディの明るい方向に向かっていったので、今後は男子と向き合っての戦いというよりも、野球というスポーツでありチームワークに向き合う展開になるのではないかと感じた。
                 
        

大正野球娘。 第4話 「これから」 (アニメ)

                 
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朝香中学との試合後、2日が過ぎても学校に来ない晶子。
心配になった小梅はお見舞いに出かけることに。だが行ってみると晶子は意外と元気だった。
だが、小笠原家の運転手の松阪は、晶子がおとといから食事もせず寝込んでいたという・・・。
一方、学院では尾張記子が退部したいと言い出したり、試合で痛恨のエラーをした鏡子も練習に姿を見せない。
なんとなく雲行きが怪しくなっている東邦星華桜花会だが・・・。
そんなとき、洋食屋・すず川に小梅を訪ねて、岩崎と高原がやってくる。

前回の練習試合で男子相手に大敗を喫した櫻花會は発起人の晶子が塞ぎこんでしまって学校に来ない。チームとしてもバラバラになりかけ、新聞部との掛け持ちに限界を感じて一人が抜けてしまうなど、櫻花會は存続の危機にさらされる。

そんな中、小梅は晶子の家を訪問し、必死の励ましをする。今度こそ男子に負けないように練習をしよう。奮起を促された晶子は、やる気を取り戻し、新生櫻花會が誕生する。
あくまで男子と対等に向き合い、平等な条件で戦って勝つことを目標にするスポ根路線に入ったのは驚いた。
ここまでは着想の素晴らしさを地に足をつけた無理の少ない展開の中で披露してきただけに、これ以上男と戦わせるのは無茶があるのではないかと思ったが、先の展開に自信があるのだろうか。
晶子が塞ぎこんだのは単純な敗戦のショック、そして女性としての劣等感と同時に、晶子が自分のせいでチームメイトに惨めな思いをさせてしまったことへの責任感と、裕福な家庭環境で育った自身が味わった挫折に耐えかねたというものだったが、そこからの小梅とのエピソードによる奮起の過程がもっと練習しようという単純なエールで済まされてしまった点に少し不安を覚えたし、不満でもあった。

そういえば、小梅の実家の洋食屋に晶子の許婚が訪れた時に交わされる小梅との会話の内容、それを聞けば小梅が野球をやっていることを察することが出来そうなものだったが、両親と店の人などは聴いてないのだろうか。良いタイミングで来客があり、そちらの応対で一時的に耳を傾ける状況が無理なことがわざとらしく演出されていたので、まだ両親共に小梅が野球をしていることは知らない、ということになっているのかもしれない。小梅自身に焦りが全く見られない点がよくわからなかった。観ている側だけがハラハラさせられる不思議なシーンだった。
ただ、ニアミスのシーンをわざと作ることで、今後のエピソードを盛り上げる一つのいいネタであることがわかりやすく示されたともいえ、また同時に、そのネタが近いうちに消化されることが示されたシーンだったといえるのかもしれない。
                 
        

大正野球娘。 第3話 「娘九つの場を占めて」 (アニメ)

                 
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何とか苦労して9人集め、野球が出来る事に。
小梅たちは、この会を『桜花会』と名づける。だが学院長からは、学校の正式なクラブとしては許可してもらえず、しかたなく同好会としてスタートを切ることになった。
とりあえず部室ももらえたのだが、そこは使われていないぼろぼろの物置だった。
それでも少しずつ物置を修理し、グラウンド整備にも励み、なんとか練習ができるように。
そんな中、アンナ先生は、9人の守備を発表する。さらに、朝香中学に練習試合を申し込んだことを川島乃枝が告白する。

小梅たちの野球チームは「櫻花會」と名付けられる。欧化とも掛けているとして、ここからも女性が野球をすることが女性の社会進出と重ねられたテーマにしていることを窺わせる。
もっとも、第1話のタイトル「男子がすなるという、あれ」が土佐日記より用いられているように、この作品自体は、男性が女性になりきって作ったという前提の上でユーモラスに構成されており、ここまで見た限りでは、男性(視聴者)の嗜好に合わせた女子達が、より男性(視聴者)に気に入ってもらうためにフェミニズムが利用されているという印象だった。
女性性からの解放ではなく、結局は女性性をより映えさせるための劇として野球をやらせているという意味で伝わってきているだけに、主人公たちが男性に対してムキになればなるほど、メッセージ性がくどくてうそ臭く、冷えたものになっていくのが残念だった。

ストーリーとしては、桜花会が同好会としてスタートし、早速練習試合をするところまでが描かれている。
男子たちと試合をするわけだが、相手は桜花会の発起人である晶子の許婚の所属するチームで、晶子はこの許婚の男子に女性として低く見られたことを怒ったのが桜花会発足のきっかけのエピソードして1話では描かれていた。
試合はその晶子がムキになるところを中心に描かれ、桜花会は懸命に挑むも、結局1回コールドという大敗を喫してしまう。このあたり、大きな波乱なく、女子が一矢報いるところもなく、男性たちになすすべなく圧倒的な差をつけられてしまうところは、エンターテイメントとしてのカタルシスに欠けているように感じたが、あえて残酷に描くことで、後の展開で大きな盛り上がりを作る仕掛けになっているのかもしれないし、もしかしたら、この作品は女子が男子にかなうわけがないという作品世界の規律に縛られたまま、女子だけでほのぼのと野球をし続けるようになっていきますよというメッセージだったのかもしれない。

なお、この練習試合には、負けたチームは勝ったチームの最優秀選手から一人指名されてランデブー(デート)に応じなければならないという約束がなされていたが、晶子の許婚の配慮によってなかったことにされる。
試合に臨んで、男子たちの欲望渦巻く視線があったのは確かなので、個人的には、もう少し深く突っ込んで描いてみてもよい展開だと思ったが、あまりにもあっさりしていただけに、このあたりの女子と男子の感情のやりとりで具体的な恋愛シーンが描かれるのかも気になった。
特に今回のエピソードは、小梅にアプローチする新たな男子も登場したわけで、小梅には実家の洋食屋で働く優しそうな男が配置されていただけに、今後は三角関係などでラブコメ路線に入るのではないかと思ったが、果たしてどうなるか。
このあたりもまた、あっけなく男子に打ちのめされて沈んだ桜花会の面々を見ると、今後は割りきって男を排した女だけの世界の青春になりそうな気配があったが。
                 
        

大正野球娘。 第2話 「春の長日を恋ひ暮らし」 (アニメ)

                 
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小梅と晶子はさっそく英語教師のアンナ・カートランドから野球の指導を受ける。
晶子はピッチャー、小梅はキャッチャーということで、投球練習を始めるのだが、キャッチャーとして捕球の仕方もわからない小梅は、晶子からボールを受けるつもりで、地面に正座してしまう。
そんな二人のやり取りが気になって仕方がない、クラスメイトの巴は、仲間に入りたいが素直に言い出せない。
だが、体育の授業のときにその俊敏な動きをみたアンナは巴を野球部に勧誘するのだが・・・。

チームメンバー募集の回。個人的には、男勝りで同性に人気を誇る剣術娘の巴の声(甲斐田裕子)が、本当に男勝りな感じで、女性の声なのだけど、中性的で渋みが効いていて、周りから浮いている感じが出ているのが良いなと思った回だった。

話としては、主人公たちが親に内緒でこそこそと野球チーム結成のためのメンバー勧誘に奔走したり、練習に励むのだが、そこにスポーツ青春コメディとしての爽やかさと明るさがありながらも、まだ野球が男性のメタファーになっている段階であるだけに、どこか背徳的で、想像力を掻き立てられるところもあった。

野球に興味があってチームに入りたいのだけど、自分から言い出せないので声をかけてくるのを待っている子とその子に野球に興味ありそうな子がいたら紹介してと声をかける主人公、そんなすれ違いを描写した茶番を繰り広げながら、ナインが揃っていく。

まだ少ししか描かれていないキャラもいるものの、9人がうまく特徴づけられていて、端役的なポジションのキャラもわざとらしくない程度に影が薄いこと自体が特徴になっていて、モブ化しておらず、それぞれのキャラがうまく描き分けられているのが面白かった。

主人公の小梅は全くの野球素人で、技術的にかなり未熟であるが、それとは対照的に、剣術の達人である巴は筋の良さを見せつけ、環というキャラは野球経験者ということもあって技術的になかなかのレベルに達していることが描写されていた。
どうやらすぐに練習試合を行うようなので、急造チームでボロボロながらも、このあたりの頼りになるメンバーをうまく使って男子に一矢報いる、という展開になるのだろうか。
                 
        

大正野球娘。 第1話 「男子がすなるという、あれ」 (アニメ)

                 
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時は大正十四年、東邦星華高等女学院に通う洋食屋の娘、鈴川小梅は、
ある日友人の小笠原晶子に突然、「一緒に野球をしていただきたいの!」と言われ、その勢いに押されて、野球がどんなものか良くわからないまま思わずうなずいてしまう。
授業が終わった後、晶子はクラスのみんなに向かって、野球に参加してほしいと呼びかける。
そのわけは、小笠原家のパーティーに出席していた朝香中学の岩崎という人物が関係していた。

大正時代末期を舞台に、女学生たちが男子のスポーツである野球を、碌にルールも知らない中で思い切って挑戦していくというストーリー。

まだ女性進出が一般的ではない時代であることがアピールされ、それが野球チームを作るきっかけに繋がっていることから、そういう背景を利用しながら、女子が野球をやるに当たっての様々な障害を乗り越えていくドラマとして構成されるのだろう。

今回の話では、低く見られる「女性」が男性への反撃を野球で試みるためにチームメンバーを集めようということになっていて、親が娘に野球をやらせないといったメッセージなどを織り込むことで、それが如何に大変なことかを時代背景とともにわかりやすく描写されている。実際に男子の野球をする様を見て、自分たちの想像していたものと現実との差に怯えてしまう女子の姿も描かれており、そこに込められた、女性と男性との肉体的な能力の差も生々しく伝えられていて、第1話を見る限りでは、リアリティをかなり意識して地に足をつけながらもコミカルな作品を目指しているものと受け取った。

面白いなと思ったのは、背景の描写はがっしりしていて、現代にも通じていそうな社会の問題に切り込んいく姿勢を窺わせながら、その世界に配置されたキャラクターは良家の子女でおっとりしたところがある風に描かれているとはいえ、如何にもコミック調、アニメの女の子といった記号のみで構成されている、複雑さのない萌えテイストであるところだった。
分かりやすい属性でキャラクターが括られているのだが、メタ的な視点で見ると、昔という封建的な時代に配置された現代風の典型的なアニメキャラクターとしての女性像と、時代背景としての抑圧された女性像が、ぎこちないながらもうまく重なっていたところが興味深かった。
                 
    
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