真田丸 第50回 最終話 (ドラマ)

                 
真田丸 第50回 最終話
豊臣と徳川の決戦が始まった。大坂城を出て、野戦に持ち込む幸村(堺雅人)だったが、形勢は圧倒的に不利。死を覚悟する茶々(竹内結子)に、幸村は「望みを捨てなかった者にのみ、道は開ける」と諭す。やがて勝永(岡本健一)らの活躍により戦況は一転、豊臣方は徳川軍を次々と撃破する。だが秀頼(中川大志)のもとに、幸村が寝返ったという噂が広がる…。幸村は、家康(内野聖陽)ただ一人に狙いを定め、一騎で突き進んでいく!

真田丸最終話。無理やりまとめようとしたからか、最後は尻切れとんぼのようになってしまっており、後半の真田丸の失速具合を象徴する出来に感じられた。

しかし、幸村と家康が如何にもフィクションのドラマであることを強調するかのような対峙の仕方をするところは妙な臭さと安っぽさがあったものの、命を大事にして生き永らえることの大切さを身の危険を顧みずに前へ出ていった家康が幸村を叱責する形で説いていたり、景勝が安全地帯で涙を流しながら幸村の姿に思いを馳せているシーンなどは、格好良さと滑稽さが同居していて、そこに演出された人間が抱える様々な矛盾には現実とロマンの狭間で三谷幸喜自身の苦悶が伝わってくるようである。

その中で、女性に強い権力や地位を与えると碌なことにならないというメッセージ性だけは一貫していた。受け取り方によっては、来年の大河ドラマである『おんな城主 直虎』へのエールのようでもあり、揶揄や挑戦のようでもあったが、それはエクスキューズで、自分に妻や子どもがいても常に自分の事を想い、傍で寄り添っていてくれる女性像への憧れを三谷幸喜がコンプレックスとして照れ隠しにしながら書いている。興味深いのは、その女性像には三谷幸喜自身を異性としてではなく、同性としてそのまま投影していることで、きりがあのように極めてアニメチックなキャラクターになっているのは同性愛のメタファーではないかとすら思う。

全体として、随所に遊び心を散りばめらせた趣のある人間模様には三谷らしさがあって面白かったとは思うし、世界のスケールが大きくなると途端に人間の面白さが通用しなくなる無力さが表れているのも教訓じみていたが、そこをフォローしきれずに三谷の脚本も淡白になってしまっていたのは残念であった。
                 
        

真田丸 第49回 前夜 (ドラマ)

                 
真田丸 第49回 前夜
幸村(堺雅人)からの書状を読んだ信之(大泉洋)は、幸村が死を覚悟していると直感し大坂行きを決意する。一方、豊臣方と家康(内野聖陽)との最終決戦~大坂夏の陣~がいよいよ始まる。幸村は又兵衛(哀川翔)や勝永(岡本健一)とともに策を立てる。徳川軍をくいとめるのは道明寺。しかし、豊臣方の策はことごとく漏れていた…。ついに幸村は、春(松岡茉優)を城から出すことに。そして、きり(長澤まさみ)には最後の使命が…

夏の陣が始まると、劣勢の中で又兵衛などが次々と討ち死にを遂げる。ドラマチックな演出を用いず、淡々とした描写に終止しているのが死とはそういうものだという強いメッセージを放っており、最終回で恐らく幸村が壮絶な最期を遂げるのだろうが、その前にワンクッション置く形となっていた。生き延び続ける伊達政宗の器の大きさもメタファーとして機能していたし、また幸村ときりが最後の最後でようやく結ばれるのに対して「遅すぎる」ときりが叱っていたが、これもまた幸村であり、人の一生というものへの寓意が込められているようであった。
                 
        

真田丸 第48回 引鉄 (ドラマ)

                 
真田丸 第48回 引鉄
豊臣と徳川の和睦の後、真田丸は取り壊され、大坂城は堀も埋め立てられてしまった。幸村(堺雅人)は起死回生を狙い、家康(内野聖陽)をわなにかけるよう佐助(藤井隆)に命じる。佐助は、もし家康暗殺に成功したら夫婦になって欲しいときり(長澤まさみ)に告げ徳川の陣へ。家康との頭脳戦が展開する中、幸村は不思議な型の銃を手に入れる。一方幸村からの書状を読み、その真意を悟った信之(大泉洋)は、大坂へ向かうと言い出す

もはや家康を殺すしかないと佐助を使って暗殺を企てるが、家康に影武者を立てられ失敗するなど、一見冴え渡る策を立てるものの空回りしてしまう幸村の姿はなまじ威厳を持ち始めたこともあって、まるでかつての昌幸のような滑稽さを纏っており、この戦いの行く末がはっきりと示されていた。また、ドラマが最終回を迎える直前のまとめとして信之を始めとした真田家についての言及が改めてなされているが、敗者となる幸村の方こそが後世に名を残す名将として大河ドラマの主演となっているのだから皮肉ではある。
                 
        

真田丸 第47回 反撃 (ドラマ)

                 
真田丸47
茶々(竹内結子)は、幸村(堺雅人)の反対を押し切り、家康(内野聖陽)との和睦に傾く。和睦交渉での阿茶局(斉藤由貴)の寛大な態度に、きり(長澤まさみ)は大きな不安を感じる…。結局、大坂城の外堀を埋め、真田丸砦を破却することが決定してしまい、幸村は激しい衝撃を受ける。もはや戦うすべを失った又兵衛(哀川翔)や勝永(岡本健一)らの、豊臣家への怒りが頂点に達する…

徳川との和睦交渉で豊臣側は使者として常高院(初)を立てて阿茶局と対峙するが、論説でまるで歯が立たず、真田丸の取り壊しや堀の埋め立てといった相手の提案を丸呑みすることになってしまう。豊臣と徳川の人材や知略の差を示唆しているのだろうが、味方であるはずの大蔵卿局に足を引っ張られ、空気に流されるままに物事が決まってしまうステレオタイプな女性だけの空間を描写しながら割りとベタに徳川と豊臣の勝敗を分けた差を女性であったとして三谷幸喜は皮肉っている。
                 
        

真田丸 第46回 砲弾 (ドラマ)

                 
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幸村(堺雅人)が築いた真田丸砦を攻めあぐねる家康(内野聖陽)は、幸村に10万石の領地を約束するなどさまざまな調略に乗り出す。有楽斎(井上順)らの強い勧めで秀頼(中川大志)は和睦を決意するが、幸村は有楽斎の言動には裏があるとあやしむ。幸村は、意を決して茶々(竹内結子)へのじか談判に挑む。一方、家康の陣にはイギリスから取り寄せた大砲が到着。運命の砲弾が、大坂城に向けて放たれる!

大阪城内が徳川と和睦するか否かで割れる。事あるごとに揉める大阪城内の様子は、もはや和睦しようがしまいが豊臣の行く末は暗いものになることが示唆されており、この期に及んで秀頼との平穏な生活を守れれば大阪城はどうなっても構わないという本音を吐露しながら母親としての一面を強調する茶々の姿は弱気ともとれ、この戦の行く末に対しての勘が働き、敗戦に怯えているようにも映った。

それらも含めて、自分が母親からの自立を促した秀頼が己の判断で和睦を決めると、それを覆すために秀頼の母親としての茶々の威光を借りて和睦に反対するなりふり構わない幸村の姿勢など全体的にぐだぐだとしたやりとりを、三谷幸喜の腕の見せどころと状況を二転三転させたり、キャラクターのカラーをこれまでとは趣向を少し変えたものにするなどして面白おかしく演出されている。

そして、一連の過程と、徳川が大砲を大阪城に撃ち込むことで幸村を信じて和睦を否定していた茶々も結局は和睦に転びそうであるというオチがうまく繋げられていて、幸村が茶々の権力を補強したことが裏目になってこれからの大阪城内が更なる泥沼に嵌っていくことまでを予感させた。

これを三谷幸喜が手ぐすねを引いて待っているわけだが、視聴者としてはそれが楽しみというよりも、それぐらいしか楽しむ要素がなくなってしまっていそうな出来であったことに不安を覚えてしまう。
                 
        

真田丸 第45回 完封 (ドラマ)

                 
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幸村(堺雅人)が築いた真田丸砦に、家康(内野聖陽)は大きな脅威を感じる。徳川軍の中には、信之(大泉洋)の2人の息子たちや、景勝(遠藤憲一)らの姿もあった。幸村は、大助(浦上晟周)らとともに徳川軍を挑発。いらだった一部の徳川兵は一気に真田丸を落そうと攻めかかる。しかし、そのことを知った家康は激しく憤る。真田丸では、又兵衛(哀川翔)や勝永(岡本健一)、盛親(阿南健治)らの牢(ろう)人衆が待ち構えていた

幸村はすぐに有楽斎が徳川と内通していることを突き止めると、それを逆手に利用した策で徳川方として襲い掛かってくる井伊と前田を鮮やかに撃退してみせる。徳川方であっても豊臣に肩入れする大名たちの姿まで描かれ、徹底して「これはもしかして豊臣が勝つんじゃないか」と錯覚させるような鋭い映像に磨き上げられていた。斯くして幸村達は大勝を収めてみせるが、史実通りに進むとすればここからひっくり返されるというのだから、また次回から茶々いじめが始まるといったところだろう。そう邪推してみたくなるぐらい今回の快勝は今までの合戦シーンとは気合の入りようが違い、スペクタクルでカタルシスが得られるものになっていた。

これだけの大戦をしたのは実は初めてと告白する幸村に今までの合戦シーンの見窄らしさが伏線として回収されていたのも三谷幸喜の巧さを感じさせる。どんなに逞しい名将ぶりを発揮しても、幸村を演じる堺雅人にはどこかまだ若武者のようなあどけなさがあって、見ていると思わず庇護欲を掻き立てられてしまいそうになり、父の昌幸とは違うカラーを出しているのが面白い。もしかしたら昌幸の若い頃も実はこうであったのだろうか、そして幸村が年を重ねることが出来ていたら昌幸のようになっていただろうかなどと思いを馳せたくなるのだ。
                 
        

真田丸 第44回 築城 (ドラマ)

                 
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幸村(堺雅人)は、大坂城の最大の弱点となる南側に出城を造ることを思いつく。しかし、同じことを考えている男がもう一人いた。さて、織田有楽斎(井上順)と大蔵卿局(峯村リエ)は、牢人衆を決して信じようとしない。豊臣家の態度に業を煮やした又兵衛(哀川翔)と勝永(岡本健一)は、大坂城を出ると言い出す。しかし、そのとき秀頼(中川大志)は…。一方、信之(大泉洋)の命を受けて松(木村佳乃)が大坂に向かっていた。

幸村の考え出す案は茶々や有楽斎、大蔵卿局などに阻まれ悉く変更を余儀なくされる。それでも、決まった方針のもとで最善を尽くし、なんとか戦に勝とうとする幸村はしかし、5人衆や大野治長、そして秀頼までを説得することが出来ても茶々や有楽斎を説得するまでには至らず、自分の中の100点満点の策ではなく、妥協の産物で戦わなければならないところが現実というものの難しや厳しさを映し出しており、また豊臣方のエクスキューズとしての伏線が張られているようでもあった。

有楽斎については恐らく徳川と内通しており、もうどう考えても徳川相手に勝てないであろう状況なのだが、真田丸(出城)が完成し、赤備えの武具がお披露目すると観ていて興奮してしまうのだから、我々も何とも残酷である。
                 
        

真田丸 第43回 軍議 (ドラマ)

                 
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徳川軍が大坂城に迫る中、茶々(竹内結子)は幸村(堺雅人)と密かに会い、ある願い事をする。一方、秀頼(中川大志)の御前で五人衆を集めての軍議が開かれる。幸村だけは、家康(内野聖陽)のいる京へ攻め込むことを主張するが、みな反対する。次第に勝永(岡本健一)は幸村の意見を認めるようになるが、又兵衛(哀川翔)だけは籠城すべきだと猛反対し続ける。そして、ついに秀頼が決断をくだすときが訪れる…。

徳川方との戦いで籠城をするか、打って出て徳川を分断して勝ちに行く戦を仕掛ける幸村の案を採用するかで割れる五人衆。幸村は交渉や情熱などで何とか五人衆の意見をまとめあげて、秀頼にも自分の案を採択してもらうことに成功するものの、茶々の鶴の一声でちゃぶ台をひっくり返され、籠城して徳川と戦うことが決まってしまう。なんとも風刺が効いていて、世の中こんなもんだよなと思わせるが、その元凶が茶々とその周辺のいずれも「女性」や「母親」という記号に凝縮されているところは若干の悪意を感じさせた。

ただ、これも一つの三谷幸喜による仕掛けで、幸村の机上の空論よりは茶々の「浪人は信用できない」とする籠城案の方が現実的という解釈もありえると考れば、ロマンティシズムとは距離を置いて冷徹に現実を見据えられる女性や母の強さを演出しているとも云える。
                 
        

真田丸 第42回 味方 (ドラマ)

                 
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幸村(堺雅人)は、久しぶりに茶々(竹内結子)との再会を果たす。一方、家康(内野聖陽)は、幸村が大坂方に加わったことに大きな恐れを抱き、出陣を急ぐ。大坂城に集まった牢人たちの中には、後藤又兵衛(哀川翔)、毛利勝永(岡本健一)、長宗我部盛親(阿南健治)らがいた。豊臣秀頼(中川大志)は幸村に総大将になってもらいたいと願っていたが、又兵衛や勝永らは激しく異議を唱える。そこで、幸村は一つの策を提案する。

秀頼に贔屓にされて総大将を担うことを依頼される幸村だったが、それを気に入らない後藤又兵衛と毛利勝永の反発によって会議は紛糾してしまう。それまでは凛々しく頼もしかった秀頼も又兵衛に気圧されてしまってはっきりとした決断が出来なくなり、仕方なく幸村は五人を大将に置き、その上に秀頼を総大将として据えるという提案をし、五人衆を発足させてその場を収める。一見主導権を握ったかのように見える幸村だったが、スムーズにいかない意思決定の結果、妥協案しか出せない現実に戦の難しさと会議で物事を決める事の良し悪しなどが演出されており、敗戦と豊臣滅亡の未来が示唆されているようにも映った。
                 
        

真田丸 第41回 入城 (ドラマ)

                 
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豊臣秀頼(中川大志)に味方することを決意した幸村(堺雅人)。しかし、ろう人たちが大坂城に集まっていることを知った家康(内野聖陽)は、九度山の見張りを増やすように命じる。幸村は、脱出のための策を練る。一方、信之(大泉洋)には家康からの出陣命令が届く。信之は、二人の息子の初陣にしようとするが、稲(吉田羊)から、ある提案がなされる。そして、大坂城に向かった幸村は、茶々(竹内結子)と運命の再会をする。

監視の目をかい潜って九度山を脱出し、大阪城へと入る幸村達。一方、信之は二人の息子のうち、どちらを嫡男とするかで悩んでいた。現状ではわずかに先んじて生まれてきたというだけしかポイントがないおこうの子と、武勇に優れた稲の子、信之はかつての自分と信繁の関係に重ねながら、優秀な弟が兄を補佐して欲しいという願いを込めて先に生まれた方を嫡男とすることを決める。だがその頃、幸村は徳川に一矢報いるために大阪に入っていたというのだからなかなか皮肉が効いてはいるのだが、ややマンネリ気味な展開が続いているか。

幸村がハッタリで自分を大きく見せようとするところは、何とも言えない哀愁と滑稽さを漂わせつつも、そうまでしても自分が主導権を握って徳川と戦うのだという強い決意の表れになっている。また、かつてサラリーマン的な身分として過ごした大阪に再び戻って来るに当たり、ブランクを誤魔化して面接試験をパスするために必要であったという現代を風刺するような演出にも映ってなかなか楽しめた。
                 
        

真田丸 第40回 幸村 (ドラマ)

                 
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九度山での生活を楽しんでいた信繁(堺雅人)のもとへ、宇喜多秀家の家臣だった明石全登(小林顕作)が訪ねてくる。大坂城で徳川家康(内野聖陽)を相手に戦ってもらいたいと信繁に懇願する。信繁は断るが、そこに現れたのは…。そして豊臣秀頼(中川大志)と茶々(竹内結子)が苦境に立たされていることを知った信繁に、きり(長澤まさみ)は…。大きな決断を迫られた信繁は、息子の大助(浦上晟周)を呼び、くじを引けと迫る。

豊臣側の将として一軍を率いて徳川と戦って欲しいと頼まれた信繁だったが、自分には大軍を率いた経験がないからと固辞する。しかし、きりに「あなた結局何もしてないじゃない」と発破をかけられると、今まで自分が関わってきた武将との様々な思い出が走馬灯のように駆け巡り、信繁は戦いの道に戻ることを決める。

大阪を追われた片桐の苦悩がどこか間が抜けていて「らしさ」を維持しているのを伏線に、大事なことだからそうすべきだと息子にクジを引かせて「幸村」を名乗るというこれまでの真田丸を凝縮したようなシーンへと繋げられている一方で、淀がどうしても凡庸にしか映らず、家康もすっかり年老いてしまっている中で、この戦いが幸村の命を賭けるに値するものなのか、視聴者に疑問を抱かせるようなものに仕立てられており、それは今後の幸村の姿で評価するべきなのか、それとも未来がどうであろうと今この段階できりの残酷さを断じてしまって良いものなのかと考えさせられた。

幸村には信繁として負け戦には参加をせず、村に残って家庭を守るという選択肢もあっただろう。そうさせない何かが信繁の中に秘められていたとしても、信繁を信之とは違う道に追い立てたのが映像的にはきりというのが、三谷幸喜の屈折した女性観のようなものが込められた含蓄のある表現になっている。
                 
        

真田丸 第39回 歳月 (ドラマ)

                 
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信繁(堺雅人)は、春(松岡茉優)らとの九度山での暮らしを満喫していた。信之(大泉洋)にも、赦免嘆願はもう不要だと答える。ただ、父としては長男の大助(浦上晟周)をどのように育てるべきなのかに悩んでいた。一方、かつて信繁がルソンに逃がしたたか(岸井ゆきの)が、海外の珍しい紐(ひも)を持って訪ねてくる。信繁はその紐を見てあることを思いつく。そんなある夜、謎の人物が突然現れ、信繁を迎えに来たと告げる!

九度山で困窮した生活を送っていたものの、商いが軌道に乗り出し、昌幸の死後、ぎくしゃくしていた周囲の人間や家族との関係もうまくいきだした信繁の前に宇喜多の家臣を名乗る男が現れる。大阪の陣への誘いなのだろうが、一度は武将として死んだ身でありながら、再び自分の力が求められることへの喜びが戸惑いと共に表情に出ているようであった。

そしてやはり信繁こそが昌幸に愛された息子で、機転の利かない安定志向の信之とは違い、信繁は家庭に収まるような男ではないということがやっと辿り着いた団欒から自ずと距離を取って遠い眼差しで見つめる孤独な男の姿として演出されていた。それを映えさせるために1話丸々をほのぼの日常回として割いている。
                 
        

真田丸 第38回 昌幸 (ドラマ)

                 
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紀州九度山村に幽閉となった昌幸(草刈正雄)と信繁(堺雅人)ら一行。昌幸は信之(大泉洋)を通じ何度も赦免を願い出るが、家康(内野聖陽)はそれを無視して着々と天下取りを進めていく。一方、一つ屋根の下で共に暮らすことになったきり(長澤まさみ)と春(松岡茉優)。信繁ときりの信濃での思い出話を聞き、春は思い悩む。やがて月日が経ち、死期を悟った昌幸は、ある夜信繁に、徳川と豊臣が将来激突した場合の策を授ける。

何もしなくて良い九度山での生活を満喫する信繁とは逆に昌幸は信濃に帰りたくて仕方がなく、事あるごとに家康に赦免を願うが、叶わないままその波乱の生涯を九度山の地で終える。最期に至っても信繁に徳川を打倒する策を与えたりと、乱世に自分の居場所を求め続けた男であった。見方によってはトラブルメーカーでしかないのだが、三谷幸喜が好きそうな世の中を掻き乱して面白くする存在としてそのキャラクターの魅力が遺憾なく発揮されていたのではないかと思う。

一方、太平の世を築き上げる家康が自分にとって邪魔となる清正を暗殺したり、秀頼が前途有望な若者だと知ると豊臣を潰してしまう事を考えるところは何とも対照的で、平和な世界というのは平凡であることを強制する社会であるというメッセージでもあるのかもしれない。
                 
        

真田丸 第37回 信之 (ドラマ)

                 
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関ヶ原での西軍敗北により徳川に降伏した信繁(堺雅人)と昌幸(草刈正雄)。信幸(大泉洋)と忠勝(藤岡弘、)による、家康(内野聖陽)への必死の助命嘆願により、高野山への流罪と決まる。しかし、その代わりに家康が信幸に命じたのは厳しい条件であった。一方、大阪に立ち寄った信繁は、三成(山本耕史)と形部(片岡愛之助)の最期について知ることになる。そして高野山に向かった信繁たち一行を待ち構えていたのは…。

関が原で西軍は敗北するが、自分は徳川に勝ったと言い張り抵抗の姿勢を見せる昌幸、しかし最後には徳川に降伏することとなる。家康は当初、昌幸と信繁には死罪が当然と考えるが、信幸と忠勝の助命嘆願により高野山への流罪と決まる。この助命嘆願自体はそれほどドラマチックではなく、真剣ながらもほどほどにやっており、それが人伝になると大げさになるところが真田家に纏わる伝承まで含めたところに風刺を効かせているようであった。

ともあれ、昌幸と信繁の命は助けるという犬伏の時に交わした約束を見事果たした信幸。だが、家康からは父子の縁を切れと命じられ、昌幸から受け継いだという名前の幸の字を捨てることになり、信幸は信之と名を改める。呼び方を変えないところに意地を見せたとしていて、なるほどこれが逆に信繁の幸村という名前にもかかってきそうなエピソードでなんとも興味深いのだが、全体的には淡々としてキレがなく、マンネリズムを脱することが出来ていないのは、もう昌幸の心を躍らせるような乱世は訪れないということを表しているのかもしれない。
                 
        

真田丸 第36回 勝負 (ドラマ)

                 
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昌幸(草刈正雄)と信繁(堺雅人)は、信幸(大泉洋)と別れ、徳川勢を迎え撃つために上田城へ。途中、昌幸と信繁は沼田城に立ち寄るが、稲(吉田羊)は思いがけない行動に出る。一方、信幸は家康(内野聖陽)から上田攻めの先ぽうを命じられる。初陣の秀忠(星野源)は本多正信(近藤正臣)とともに兵を進める。徳川勢を撃退しつつ、しかし信幸とは戦わないために信繁は一計を案じる。そして佐助(藤井隆)が衝撃の知らせを届ける

第二次上田城合戦勃発。真田も敵味方に分かれて戦うことになるが、信幸の機転で真田同士で争うことは避けられる。そして、真田の絆と昌幸と昌幸の戦術に面白いように翻弄されてしまう徳川軍率いる秀忠。ということになっていたわけだが、第1次の時と同様またしてもパッとしない出来に小首を傾げてしまう。

ただ、徳川を撃退した昌幸らの元に佐助が現れて関ヶ原の決着がついたことを知らせるシーンで、あっという間に天下分け目の大戦が終わってしまったことに昌幸と信繁が驚きを隠せないシーンは、視聴者としても、え、そんなにあっけなく関ヶ原終わらせちゃうのと作中の昌幸らと思わずシンクロしてしまうような仕掛けになっており、三谷幸喜のセンスが光っていた。
                 
        

真田丸 第35回 犬伏 (ドラマ)

                 
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上杉攻めのための徳川軍に従っていた真田家に大坂で三成(山本耕史)や刑部(片岡愛之助)が打倒家康(内野聖陽)のために挙兵したという報(しら)せがもたらされる。どちらに味方すべきか、信繁(堺雅人)、信幸(大泉洋)、昌幸(草刈正雄)の三人は下野国・犬伏(いぬぶし)の地で白熱した議論を戦わせる。一方、きり(長澤まさみ)は三成らの人質となっていた玉(橋本マナミ)を救出に向かう。そして、三人が下した結論とは?

真田親子三人が徳川と豊臣にそれぞれ分かれて、どちらが勝っても真田が存続出来るように双方へベットするという犬伏の別れが描かれる。

本作ではこのベットを信幸の発案として描いており、それが今まで信繁の才気に押されていたお兄ちゃん信幸がコンプレックスをバネにして昌幸を見返し信繁の一歩先を行くまでになった歴史の勝者としての能力の高さを三谷が讃えているようでもあり、あるいは別のシーンで徳川に調略される小早川秀秋と信幸を重ねていて、なんとも狡い提案をする奴だという怒りや嘲笑が向けられているようでもあり、そしてその案を呑むしかない時代に取り残された真田昌幸という存在の哀れさが命を賭して徳川に挑む覚悟の石田三成と大谷吉継の二人の関係と対照的に描写されているようでもあった。
                 
        

真田丸 第34回 挙兵 (ドラマ)

                 
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家康暗殺に失敗し謹慎することになった三成(山本耕史)。それでも収まらない清正(新井浩文)らは三成襲撃を計画する。信繁(堺雅人)は伏見城下での武力衝突を恐れ、きり(長澤まさみ)に上田へ帰るよう指示するが、きりは玉(橋本マナミ)のもとに身を寄せる。信繁は、信幸(大泉洋)と協力して三成を守ろうと立ち向かう。そして、家康(内野聖陽)は会津の景勝(遠藤憲一)を攻めることを決意。いよいよ、関ヶ原の戦いが迫る!

直江状の挑発にまんまと乗せられる形で家康が激怒して上杉討伐を決める。そして、それを待っていたかのように蟄居させられていた三成が徳川攻めに立ち上がる。ここだけ見ると逆襲の三成が歴史の勝者になりそうなシーンに演出されていたが、乱世になれば武田領を取り戻せると考えている昌幸と共に周囲に理解されない中で、それでも己の生き様を曲げることの出来ない男の悲哀もまた満ちていた。
                 
        

真田丸 第33回 動乱 (ドラマ)

                 
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秀吉の遺言をことごとく無視し、自らの影響力を強めていく家康(内野聖陽)。三成(山本耕史)は家康を討つため伏見城下の徳川屋敷を急襲することを決意するが、暗殺計画は本多正信(近藤正臣)に漏れてしまう。正信は諸大名に危機を訴え屋敷の守備に駆けつけるよう呼びかけ、徳川につくかどうかを試す。一気に形勢不利となった三成を救うため、信繁(堺雅人)は、昌幸(草刈正雄)のもとを訪ね、思いもよらぬ提案を行う。

今回も三成の不器用さや人付き合いの下手なところをこれでもかと見せられる。家康との対立を深めていく三成に味方をする者はわずかで、皆が家康の側についてしまう。中でも寧までが豊臣家と太平の世を守るためにと家康の側についてしまうところは、己を理解してもらえない三成という人間の不憫さと不遇をよく表していたように思う。で、あるからこそ今度こそ俺に任せろと立ち上がる上杉景勝の姿が感動的に演出されるのだが、全体的に前回からワンパターンであり、大谷吉継の忠告を聞き入れず、徳川を中心とした体制で天下泰平の世を守っていくのをあくまで拒む三成の姿が視聴者の目にまで未だに秀吉の死を受け入れられていない幼稚なものに映り、辟易させられてしまう。

もう完全に独りよがりであるし、周りからもそう見られているのだから、そこで開き直って己の中の野心を外に出してみせればよいのにそれが出来ない三成のつまらなさが画面を通して伝わってくるのが、本人が本気で義のためにと思っているだけに余計に痛々しい。
                 
        

真田丸 第32回 応酬 (ドラマ)

                 
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上杉景勝(遠藤憲一)、宇喜多秀家(高橋和也)など有力大名たちによる政権運営が始まる。家康(内野聖陽)と三成(山本耕史)は、お互いに宴を開いては、自分の陣営の大名を増やそうと躍起になる。加藤清正(新井浩文)や伊達政宗(長谷川朝晴)も徳川に傾き、次第に三成の形勢は不利に。信繁(堺雅人)や大谷吉継(片岡愛之助)がいさめるのも聞かず、三成はある行動を起こす。

家康と三成がそれぞれ競うように宴を開いて、自分の側に大名を取り込もうと躍起になる。だが、三成の宴は寂しいもので、それというのも大名を宴に誘っても肝心の三成が中座してしまったり堅苦しかったりで趣きがないというのもあり、宴を通して三成という人間そのものがとことん不器用で人望のないことを改めて映している。

秀吉にあった人たらしの能力が致命的に欠けている三成は常に家康の後手を踏むことになるが、それでも景勝などが評定の場で家康に対して尻込みしてしまう中で三成だけが堂々と異議を申し立ててみせるところなどはなるほどこの雰囲気の中で家康とやり合うには三成ぐらい空気を読まない男でないと無理だったのかもしれないなと思わせ、無粋さと同時に天下を争うことのできる男の器というものが演出されていたように感じた。思えば三成は秀吉に対しても切腹覚悟でそうであった時が描かれていた。それだけ豊臣家に対する忠義が厚いということなのだろうが、悲しいかな、幾多の修羅場をかいくぐってきた多くの大名や武将の目は三成よりも家康の方が遥かに優れているという冷徹な評価を下しており、秀吉が没した今、自らの命運を三成に託すことの不安が漏れだして視聴者にも伝わってくるようであった。
                 
        

真田丸 第31回 終焉 (ドラマ)

                 
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秀吉(小日向文世)の死期が近づく。遺言状をめぐり対立する三成(山本耕史)と家康(内野聖陽)。寧(鈴木京香)は権力争いに心を痛める。一方、茶々(竹内結子)は、秀頼を秀吉に会わせようとしない。信繁(堺雅人)は茶々を説得して親子の対面を実現させようとするが…。そして三成は、昌幸(草刈正雄)に家康暗殺を依頼。出浦(寺島進)は単身、徳川屋敷に忍び込むが、そこには本多忠勝(藤岡弘、)が待ち構えていた!

秀吉がとうとう最期を迎える。この最期の時を迎えるまでに時間をたっぷり割いているのだが、個人的には今ひとつぱっとしない内容に感じたのでそのへんのズレが寂しい。秀吉が死んだ時にはむしろやっと死んでくれたと思ってしまい、それが逆にリアルな感情として三谷幸喜の狙い通りの演出だったとしたら流石である。

また、出浦が家康暗殺に失敗してしまうが、大きな障害となったのが徳川の側につく信幸であり、今後の暗示になっているのもこれまた三谷らしい。しかし、秀吉は結局三成に家康を殺せと命じるのならもっと早く自分で何とかしておけよと思うのだが、秀吉が出来なかったことを三成如きが成し遂げようと言うのだから土台無理な話であったということなのかもしれない。
                 
    
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