項羽と劉邦 若き獅子たち (漫画 横山光輝)

                 
項羽と劉邦 (1) (潮漫画文庫) 項羽と劉邦 (1) (潮漫画文庫)
張良の始皇帝暗殺未遂と始皇帝の死から、陳勝・呉広の乱、楚漢戦争での項羽の死までを描く。

巨匠横山光輝による項羽と劉邦。
巷に溢れる過剰ともいえるほど演出に凝られた現在の娯楽漫画と比べるとやや表現が堅く、質朴とした説明調にも見受けられるが、筆致から窺える確かな構成力と知識が読みやすさを支えており、こういうのを不朽の名作というのかと、唸らせるほどの豊かな作品性が読者に伝わってくる。

項羽と劉邦、当初劣勢だった劉邦を天下統一に導いたもの、そして項羽を惨めな死に追いやったものは何なのかという点がすごくわかりやすく、単行本全21巻、文庫版全12巻という、それだけの長編歴史スペクタクルであるにも関わらず、要諦としては外見や経歴で人を判断せずに賢人の採用をためらわず仁政を施し人心を得た方と残忍で暴虐の限りを尽くした方を勝者と敗者、明と暗に分けて対照的に描き続けるという繰り返しであった。

ロマンを追いかける歴史物の常というのか、作者の判官贔屓が過ぎるのは気になったし、項羽の最期で幕を閉じるのではなく、項羽を倒した後の劉邦や韓信も描いて欲しかったところではあるが、力なき正義の脆さや、また仁愛の者であっても権力を得れば容易に腐敗するという現実の厳しさを指摘しながら、時に読者と共に嘆くその作者の姿勢だからこそ、およそ人間の歴史自体がこれの繰り返しなのだろうという、ともすれば上から目線にも取られかねないその示唆を一読者として素直に受け入れることができるという不思議なマジックがかかっている。
                 

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