殺し屋イチ (漫画 山本英夫)

                 
殺し屋1 第1巻 殺し屋1 第1巻
キョーレツな痛みを発火点にさく烈するイジメられっ子・イチの泣きの拳が欲望都市・新宿で美しく輝く。最終ハードコアバイオレンスの戦慄。

あのいじめられっ子「イチ」が帰ってきた! 殺し屋になって……。

高校時代編と同様にイチは強くなっても気が弱いままで周りから侮られる存在であった。イチは不気味な作り笑いを浮かべて人との付き合いをなんとかやり過ごそうとするが、ますますタチの悪い連中に絡まれて付け込まれるという根っからのいじめられっ子体質。

いじめられていた過去のコンプレックスをトラウマとして抱えており、そこをエネルギーに感情を昂ぶらせて爆発するというのは高校時代編と一緒だが、新宿でヒットマンとしてヤクザを殺していく今回のシリーズでは、過去のトラウマに悶え、苦しみながら、殺害を遂行していく様に、イチという存在を利用して甘い汁を啜る頭の良い男という存在が追加されることで、痛々しさが増している。

更に、イチの思い込みの激しさと変態的といえる真性のサドという性癖をプラスして、単にビジュアル的にグロテスクでハードなバイオレンスというだけでなく、人間の内面の気味悪さまで抉り取ろうという演出が施されていた。

面白いなと思ったのは、全てが片付いて、最高の絶頂(射精)を迎え、トラウマやコンプレックスのエネルギーが凡人レベルまで落ち着いたイチが殺し屋としては使い物にならなくなり、それが新宿という欲望の街の業の深さとして描写されているのだが、その後の垢抜けたけれどもどこか不器用さが残ったままのイチはまるで魅力的に映らず、新しい殺し屋の存在の方がギラギラしていてどこか惹きつけられるところがあるところだ。

この漫画を読んでいると、結局世の中、コミュニケーション能力や共感能力、そして知性(狡猾さ)だよなあと悲哀な感情に沈む一方で、コンプレックスにまみれた人間の魅力というのも捨てがたいと考えることが出来るのが素敵だとは思う。何か重いものを抱えた人間には強くなる素質がある。僕もそう思うし、そう信じたいものだ。
                 

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