タキオン=フィンク (漫画 樹崎聖)

                 
Tachyon fink(タキオン・フィンク) (ジャンプコミックス)  Tachyon fink(タキオン・フィンク) (ジャンプコミックス)

冷凍睡眠(コールドスリープ)から目覚めた主人公を待っていたのは、自分の知っている世界から大きく変貌を遂げた近未来の地球であった。ナノテクノロジーにより食料やエネルギーの心配がなくなり、労働から解放された人類だったが、支配者層に都合よく遺伝子を操作されてしまい、結局、人権の軽視された旧世紀然とした惨めな生活に戻りつつあった。そして主人公もまた父親代わりとして慕っている男性に実は冷凍睡眠している間にモルモットにされていたことを知る。

近未来SFとして著者が擬似科学考証にこだわったとコメントしている通り、SFの手本のような背景のしっかりした作りこまれた世界観が秀逸である。幸福を追求するために発展を遂げてきたはずなのに、発達しすぎた科学技術は人間と人間社会の統治システムで制御するのには限界を迎えるということなのだろうか。あるいは、どんなにテクノロジーが発達してもどこまでも同じ歴史を繰り返し続ける成長しない人間という存在に対してのアイロニーが込められている。

これを主人公が人間であって人間ではない「化け物」として、憂いを帯びながらも、腕力でなぎ倒して道を切り拓く。ありがちな、冷たい科学(ロボット)、熱い感情(人間)という冷戦時のアメリカ側からのアジのような二項対立構造にも取れるが、こんなにも細部までこだわられた世界観なのに単純にひたすらぶん殴って解決していくというところに痛快さが際立っていた。
                 

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