蟹工船 (小説 小林多喜二)

                 
蟹工船蟹工船
虐げられる労働者たちの闘争を描くプロレタリア文学の代表作

船でもなく、工場でもない――「蟹工船」。戦前、オホーツク海上で行われた「たらば蟹」の加工設備を備えた漁船。そこは、航海法や工場法に適用されず、さらには労働法規もない。まさに海上に浮かぶ過酷な労働の場だった。劣悪な環境の中、監督による暴力・虐待、過労や病気で次々と倒れてしまう。労働者はやがて権利意識に目覚めてゆく――。
本作は、小林多喜二によって描かれた小説であり、プロレタリア文学の代表作のひとつです。また、国際的な評価も非常に高く、複数の言語に翻訳されている作品です。

蟹工船という現代でいえば都市伝説的な意味での「マグロ漁船」をイメージさせる劣悪な労働環境の下で働かされる労働者達が過労や病気で倒れ、中には命を落としていく者も珍しくない中で、労働者達が団結して資本家と国は守るが自分たちを守ってくれない軍隊、そして同じ労働者であるはずなのに資本家の手先となって労働者を苦しめる監督に対して反旗を翻していくという話。

プロレタリア文学と呼ばれるだけあって、共産主義に親和的で都合の良いイデオロギー臭を感じさせるものの、1929年に発表されたこの作品が21世紀になってブームを巻き起こしたのは、単に我々が「ブラック企業」なる言葉を生み出し、日本の労働者が置かれている立場と環境に疑問を抱き、ワークライフバランスについて真剣に考え出したからと云われているが、この作品自体、登場するほとんどが自力ではどうにも抜け出せないほどのひどい貧困層の学もない者達で構成された集団であっても、団結して交渉して行動するという労働三権を行使して闘争繰り広げることができ、勝利を掴み取ることができるという過程に作為的なものがないと表面的には取り繕われており、つまり労働三権は睡眠や食欲と同じように人が生きるために自然に生まれるものなのだという流れに説得力を感じ取れるほどのクオリティではあった。

そこに込められたメッセージはまた、労働者は団結して戦わなければならず、そうすることで均衡が保たれ、労働者の平穏な生活が守られるというものであり、逆に言えば行動しない者に対しては厳しいものであるようにも受け取ったが、黙っているばかりではいいようにされてしまうのは、何も労働の現場だけではなく、政治も同じであり、窮屈さを感じるものの、残念ながらそれが民主主義というものなのだろう。それにしても面白いのは、これをプロレタリア文学が主張していることだが、逆説的だから故に共産党を信用してみようという考えに到れるのかもしれない。個人的にはこの本を読む限り、思想的に「自由」がどこにもないので、これで共産主義に傾倒しようという気にはなれないのではあるが……。
                 

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