アヒルと鴨のコインロッカー (小説 伊坂幸太郎)

                 
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
ボブ・ディランはまだ鳴っているんだろうか?
引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は――たった1冊の広辞苑!? そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ! 清冽な余韻を残す傑作ミステリ。第25回吉川英治文学新人賞受賞。

軽妙な筆致で現在と二年前(過去)を交錯させている伊坂幸太郎の推理小説。

河崎という浮気性の男を日本語の師匠にしているブータンからやってきた留学生のドルジは河崎の元カノである琴美と恋人の関係にあった。しかし、世間を賑わせていたペット惨殺事件に首を突っ込んだ結果、琴美は殺されるような形で死んでしまい、犯人達に対してドルジが復讐を企てるというプロットになっていて、話自体は大それたものではないのだけども、それまでカタコトでしか日本語を話せなかったドルジが完全に日本人コミュニティの中に日本人として溶け込んでしまうほどの流暢な日本語を身につけるまでの心境や、琴美の元カレで他者にHIVを感染させてしまった事を気に病んで自殺した河崎を名乗ることの覚悟などを考えてみた時に、復讐の中身がユーモラスでソフトであったらこそ余計に哀愁が伝わってくる。

琴美はやはり河崎が好きだったのではないかとドルジが悩んだ節もあるのではないか、またドルジが死者の存在(過去)にそれほどまでに執着して縛られていることは河崎と同化して日本人になったからこそなのだろうか、などと思いを巡らせてしまったりもするのだが、それはさておき、最後のどんでん返し、つまり現在における河崎とはドルジのことであったというミスリードを用いたオチに多くのことを凝縮して委ねすぎているという印象を抱いてしまう作品の出来そのものについては賛否の分かれるところだろう。
                 

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