伊藤潤二恐怖マンガCollection[13] サーカスが来た (漫画 伊藤潤二)

                 

伊藤潤二恐怖マンガCollection (13)

『サーカスが来た』『墓標の町』『隣の窓』『怪奇ひきずり兄弟・次女の恋人』『怪奇ひきずり兄弟・降霊会』の5編が収録されている。

『サーカスが来た』は、いなかの小さい町にやってきたサーカスに町中は大はしゃぎ。しかし、多くの見物客を集めたサーカスで披露されたショーは、危険な芸に挑んだ団員達が次々と失敗して死んでいくものだった。実は死神の団長が世にも美しい娘を餌にして町中の男を団員として集めては別の町に移動し、男たちを殺戮する公開ショーとして楽しんでいた。ハーメルンの笛吹き男のようなタイプの話に仕上げられている。

『墓標の町』は、死んだ場所で死体がそのまま墓標になるという町で起こる奇妙な出来事が描かれている。人間が死んだら自然に石になるというのは、短い時間で遥かに長い時を経るような風であり、それを想像すると、その世界では成仏できない人間は尋常ではないほどの狂気と憎しみと苦しみにのたうち回り、凄まじい負のエネルギーを発するというのも納得いくもので、それが、唐突ともいえる展開による哀しい結末に説得力をもたせている。

『隣の窓』は、引越して来た先で、隣の家の窓を通して不気味な女に悩まされる男の話。中年による若者への執着の不気味さを、ありがちな男と女の関係を転倒させ、中年女性に迫られる若い男というシチュエーションを用いて訴えかけてくるホラー。

『怪奇ひきずり兄弟・次女の恋人』は、容姿が醜く不気味な引摺家で、唯一美人である次女が家出をして、男と同棲をするが、家族によって引き戻される。人の命をなんとも思わないその一家は、次女と同棲していた男をどう殺そうかという話し合いで盛り上がる。そして、次女も見た目は違っていても性根は引摺家で……。という話で、著者の漫画の場合、容姿が不気味な人間は病んでいるか性根が腐っている場合が多いが、見た目が良くても人の性根は腐っていますよと読者である我々に釘を刺したような一本になっている。

『怪奇ひきずり兄弟・降霊会』は、またまた引摺家が登場する話で、引摺家の長男が恋をした相手が心霊写真を撮るが好きだということから、亡くなった引摺家の子どもたちの両親に対して降霊会が開かれるという話。しかし、長男と同じ相手に恋をした次男によって降霊会は「インチキ降霊会」に変えられてしまって……。一家の長たる長男がその権威をなくしたら、何もできない男としてしおらしくするしかないところが、対照的に威張り散らすようになる次男とうまく比較されており、人は権威と環境によって完全に作られている道化人形であるとしてギャグテイストに描かれていた。
                 

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